自閉症には感覚の過敏性があるといわれています。
これは、自閉症の方たちが、私たちとは違った「感覚の処理」をしているからです。
つまり「感覚の処理の仕方の違うこと」=「高い感覚の世界」に自閉症の方たちはは生きているのだといえます。
今回はその中でもっとも多くみられる「聴覚の過敏性」を公開していきます。
自閉症が音に敏感なのは「五感からの刺激を受け取りすぎてしまうこと」
感覚に過敏なだけではない!「鈍感なことも」
自閉症では、「見る・聴く・触る・味わう・かぐ」といういわゆる「五感」が過敏なことが多いです。
それによって、自閉症の方は強い不安感を感じたり不快で耐え難い刺激になったり、時にはパニックを引き起こしたりします。
触覚の過敏性は、感覚統合により改善するかもしれないとの報告もあります。
高機能自閉症やアスペルガー症候群などすべての自閉症スペクトラム圏の方は、何らかの感覚の過敏さがあります。
特に一般的に多いのは「音の刺激に対する過敏さ(聴覚過敏)」と「触覚に対する過敏さ(触覚過敏)です。
ところが、自閉症では五感の過敏性があるにもかかわらず軽度の痛みに対しては鈍感で「我慢強く」みえたり、あるいは「怪我に気づかなかったり」することもあります。
鈍感だったりすることもあるよ。
聴覚過敏とは「電気信号が増大されて脳に伝わっている状態」
音は聴覚だけではなく脳で電気信号をきいている
例えば、私たちは音を聴く時、聴覚だけを使ってきいているのではありません。
音は電気信号におきかえられ、大脳で処理されて認知されているのです。
耳で聴いているのと同時に「脳でも聞いている」のです。
ですから、聴覚過敏がありますと大きくなった音でまるで「殴られている」ような感覚を覚えます。
筆者も、(一応)アスペルガーのグレー診断ということになっているのですが、疲れやストレスがたまっていると聴覚過敏になります。
そのとき、自転車の音や、店内放送の音。
レジのおつり、他の人が手にとる「商品のがさっとした音」など・・・・
とても大きくまるで耳元で聞こえてくるようで辛いですね。
自閉症の音の過敏性は「嫌いな音のパターンがある」
「突然」「高い音」「刺激の多いざわざわした」3つ
聴覚過敏を持つ自閉症の方の「強烈に感じられる音の種類」には以下の3つのタイプがあります。
- 突然の大きな音
- 家電製品などの高いモータ音
- ざわざわする人の多い場所での騒々しい音
聴覚過敏には「突然の大きな音」はとても怖い
自閉症の聴覚過敏のパターン、「突然の音が怖い」です。
誰だって、突然の大きな音というのは驚いてしまうものです。
雷や、何かが落っこちたときの音などなど。
聴覚過敏がある自閉症の人にとって「急にはじまる大きな音」は、とても衝撃が強いのだそうです。
突然大きな音がすると、今でも私は飛び上がってしまいます。ほかの人よりも強烈に反応してしまうのです。私は今でも風船が嫌いです。いつ風船が割れて驚かされるのか、予測がつかないからです。
(テンプル・グランディン(1988)書籍ガイドブックアスペルガー症候群 200pより引用)
子どものころは、学校で始業や終業のベルが鳴ると、完全におかしくなった。歯医者のドリルみたいに感じたのだ。決して大げさに言っているのではない。ベルの音を聴いたら、歯医者のドリルで歯を削られているときに感じるような痛みに襲われるのだった。
(テンプルグランディン著:自閉症の脳を読み解く 101Pより引用)
授業のチャイムが「ドリルのように痛い」
なんて自閉症の人の証言をきかないと
普通に聞こえる私たちは知らなければわからないですよね。
自閉症の人は「突然の大きな音」をとても鋭く強く感じるのです。
音への過敏性がある自閉症の人が嫌な種類の音、具体的には?
たとえば
・犬の遠吠え
・風船の割れる音
・運動会のピストルの音
・電話のベル
・咳
・警報音
・学校のチャイムの音
・赤ちゃんの泣き声
・ハンドドライヤーの音
・掃除機の音
・ヘアードライヤーの音
・ミキサーやジューサーの音
・花火の音
・建設現場の音
・食器がぶつかる音
・きしむドアの音
などです。
自閉症の聴覚過敏を持つ人が感じる「予想できない突然の大きな音」が辛い理由は、「予想していても、コントロールできないこと」だとテンプル・グランディンさんは述べています。
自身も自閉症であるテンプル・グランディンさんによると
予測できないことを「自分のタイミングでするならば」慣れるかもしれないとのことです。
「自分でスイッチをいれてもらう」
など工夫できるかもしれませんね。
聴覚過敏で辛い音のパターン「家電製品などの高いモータ音」
家電製品などの「高いモーター音が苦手」です。
ドライヤーや風呂場の通気口のファンなどの高音の雑音が持続するモーター音は、今でも耐え難く感じます。低温のモーターはそうでもありません。
(テンプル・グランディン(1988) 書籍ガイドブックアスペルガー症候群/トニー・アトウッド著 200pより引用)
小型家電に使われているモーターの音に特有の持続音が、自閉症の方には耐えがたいほど苦痛に感じるようです。
ざわざわする人の多い場所での騒々しい音
ざわざわする人ごみというのは、たくさんの音が複雑に絡み合った音です。
喧騒とも表現されるいわゆる「ざわざわ」です。
この「ざわざわ」という音は、私たち定型発達にとっては比較的不快に感じることはありません。
ですが、この人のざわざわという音は、自閉症の方にとっては「すべて混ざり合った音の洪水」のように聞こえるようです。
雑音は私にとっては大問題でした。大きい音やざわざわした音をうまく聞き流せず、すべての音に耳をふさいで引きこもるか、音のすべてを貨物列車のコンテナみたいに封じ込めるしかなかったのです。
(テンプル・グランディン(1988) 書籍ガイドブックアスペルガー症候群/トニー・アトウッド著 201pより引用)
👆うまく聞き流すことについて、聴覚過敏がある人がどれだけ難しいかよくわかります。
そうした音の猛攻撃を避けるために、自分の中に引きこもって世界を遮断していました。大人になった今でも、耳から入る刺激をうまく調整することができません。
空港で電話する時に騒音を取り除いて電話の声だけを聞くことができません。
騒音を聞かないようにすると、電話の声も聞こえないのです。
(テンプル・グランディン(1988) 書籍ガイドブックアスペルガー症候群/トニー・アトウッド著 201pより引用)
自分に必要のある音だけを選択することがとても、難しいのですね。
これでは、音がたくさんある場所ではとても辛くていられないでしょうし、聞き取ることもとても難しいことは想像にかたくありません。
なぜ自閉症の聴覚過敏では「人込みのざわざわ」が辛いのか?
聴覚過敏では選択的注意によるフィルターが機能しにくい
私たちは、必要のある音だけに注意をむけたり「聞こえる」ような機能が脳にはあります。
ですが、自閉症の方は感覚の処理の問題による過敏さ・鈍感さにプラスして、「選択的注意」も弱いのです。
選択的注意とは、必要な音以外をフィルターする機能のことです。
自閉症ではこの選択的注意がうまく働かないことがあります。
また、聴覚の過敏性はチョウチョのはねの音がきこえたり、バスや車のエンジン音の違いを当てられる子までさまざまです。
また、聴覚の過敏性は体調や日によって、我慢できるレベルが変わってきます。
疲れているときは、いつも耐えられている音でも耐え難い音になってしまうこともあるのです。
自閉症の聴覚過敏の対処法は「イヤーマフを使う」
苦手な音が避けられない場合はイヤーマフや耳栓を使う
聴覚過敏では、どの音に過敏であるのか?わかったら、それをまず避けることができるようであれば避けましょう。
避けられない場合は以下の対処法があります。👇
- イヤーマフやノイズキャンセリングヘッドホンなどを使う
- 耳栓を使う
- 掃除機などは子供のいないときに使う
- 音楽を聴くことでその音を相殺できるかもしれない
- 一度にたくさんの人が同時に話しかけない。ひとりずつ。一つずつ。
イヤーマフやヘッドホンを外で使うときには、聴覚過敏用保護シールを使うと周囲への理解の手助けになります。
【ヘッドホンしてると怒られる】聴覚過敏保護用シンボルマークを知っていますか?
自閉症の聴覚過敏ってなんだろう?まとめ
- 自閉症では感覚の過敏性がある
- 五感では聴覚の過敏性があることが多い
- 突然の音でかつ大きい音は予測できないので辛い
- 本人が予想できてもコントロールできずに感覚を受容体が反応する
- なるべく特定の音を避けるような工夫をする(イヤーマフ・耳栓など)
大切なことは、自閉症の一人一人の「感覚の過敏性」が違うことを理解することです。
聴覚過敏といっても大きい音すべてがだめなのではないこともあります。
さい音だから大丈夫ということでもなく、「ある特定の音」が苦手だったりすることもあります。
「聴覚過敏がある方にとってどんな音が辛いのか」よく観察してあげてくださいね。