決まった服しか着ないし・・・触覚過敏ってきいたけどどういうこと?
・靴下をすぐに脱いでしまう
・決まった服しか着ない(決まった手触りの服をいやがる)
・タートルネックの服やマフラーを嫌がる
・シャワー・雨をこわがる
・髪の毛を切られるのをいやがる
・毛布などふわふわしたものを好む
・圧迫感のあるものにはさまれるのが好き
・優しく抱きしめられるのを嫌がる
これらの症状は、触覚過敏の症状です。
筆者の息子の子育てで、特に困るのは「抱っこでのけぞってしまうこと」でした。
当時は不思議でしたが、触られるのが嫌だったのかもしれません。
今回は、自閉症の触覚の過敏性について公開していきたいと思います。
【自閉症】に見られる触覚過敏「抱っこされるとのけぞる」
赤ちゃんは抱っこが好き。だけど自閉症は抱っこが嫌いな場合がある
赤ちゃんはみんな抱っこが大好きです。
お母さんの温かいぬくもりを肌を通して感じていると、安心できるからです。
ですが、自閉症の赤ちゃんは「抱っこされること」を嫌がることがあります。
これは、なぜかというと「触覚の過敏性」があるからです。
赤ちゃんの頃、親や周りの人は「可愛いね」といって、子供に触れようとしてくることが多くなります。
触られること抱きしめられることや撫でられることは、一種の愛情表現でありハグは世界でも親愛の感情を表わす挨拶にもなっています。
しかし、自閉症の赤ちゃんや子供は、抱っこしようとする人を突きとばしたり、泣いてみたり、緊張でかたまってしまうことがあります。
その姿はまるで「触れようとしてくるものすべてを拒んでいるように見える」こともあります。
お母さんとのふれあいを拒絶しているわけじゃないんだよ。
抱っこを嫌がる=人との交流や愛を拒絶しているわけではない
触覚過敏がある自閉症の方は、決して「親から抱きしめられたり、ハグされるなどの身体接触やスキンシップによる愛情を拒絶しているのではありません。
当は、同じように抱きしめられたり、親からの愛情を求めているのです。
子どもの時、抱かれることの心地よさを求めてはいたのですが、冷静でいられなくなるという恐れから尻込みしてしまうのでした。誰かに抱きしめられると、まるで波に飲みこまれたような気分でした。(151項)
(テンプル・グランディン 1984 )
ですが、触覚が過敏であるがために触れられるととても辛いため、それを拒絶しているように受け取られてしまうだけなのです。
ただ、自分でもどうしようもなく勝手に触覚が反応してしまうだけなのです。
触覚過敏はくすぐったいというより「痛い」
くすぐったいというより「むき出しの肌をサンドペーパーで擦られるような痛み?!」
触覚の過敏性があると、少しの「刺激」がまるで皮膚がないときのように感じられることすらあります。
服の感触がいつもと違うだけでも、自閉症の子供にとっては、大変に辛くて耐え難く痛いものとして触覚が増大して痛みを伝えてしまうのです。
自閉症の方は、それを「むき出しの肌をサンドペーパーで削られる」と例えています。
自閉症の触覚過敏があると特定の服しか着れないこともある
触覚過敏といっても、人によって症状の現れ方はさまざまです。
「頭皮・手のひら・腕の上部など」特定の部位が過敏であることが多いようです。
それは、1回着てみて「痛くなかった服」は、触覚過敏のある子供にとって安心・安全であると学習するからです。
私たち親は、それを知らずに「勝手に買ってきた服を着せて泣いている子供をわがまま」だと思ってしまうかもしれません。
ですが、それはまったくの誤解です。
自分の肌と肌がこすれても痛い人もいるんだって!
触覚過敏のある人は、「長ズボン」をはいたり、ガウンなどのごわごわした触覚への刺激を避けるために見えない(私たちが理解できない)工夫をしたり、辛さを経験しています。
親は、自分の感覚で子供を見てしまいがちです。
服なんてどこが痛いの?と感じてしまうかもしれませんが、触覚過敏の人にとってはくすぐったい=痛いレベルになることもあるということを忘れないようにしたいものです。
触覚過敏があるときの症状はさまざま
濡れた感触を嫌がるのも触覚過敏の症状です
触覚過敏が、具体的にどのように表れるのかを見ていきましょう。
- 服を全部脱ぐ
- 特定の素材の服しか着ない(ウールはダメなことが多い)
- 軽く触れられただけで、怒るあるいは泣きわめく
- 親しい人でも抱きしめられるのを拒む
- ピタッとしたまとわりつく服が苦手だ
- デニムの固くてごわごわする素材がヒリヒリする
・水で濡れたままの服を着ること・袖が濡れたままなのが耐え難い
・濡れた足で、浜辺の砂を歩くのが耐えられない
・濡れたタオルが気持ち悪くて触れない
・ハンドクリーム・工作用のり・粘土などが使えない
・洗い立てのコップの感触が気持ち悪い
触覚過敏のある人の好きなもの
触覚過敏があると圧力を好む
私は深い圧力刺激を望んでいました。ソファのクッションの下にもぐりこみ、クッションの上に妹を座られたものでした。圧力には、気持ちを穏やかにリラックスさせる効果があります。
触覚過敏のある子は「好きな触り心地」がある
そのほかに「触覚の過敏性」というよりは「触覚の刺激のかたより」によって好きな刺激もあるようです。
- 他人の髪の毛をさわりたがる
- いつも指先で何かをこねたがる
- 毛だまを撫でたり、毛布をなでる
- ストッキングを撫でるのが好き
触覚過敏の治療には感覚統合がある
感覚統合訓練とは触覚防衛反応を軽くする作業療法
現在のところ、触覚過敏に有効な治療としては、作業療法士が行う「感覚統合訓練」によって触覚防衛反応が軽減されるということがわかっています。
感覚統合でなぜ触覚過敏が治る(改善する)の?
私たちは身の周りの情報を「五感」によって感じています。
そのほかにはも、体の動きを感知する感覚(バランス)として「前庭覚」や筋肉の動きを感知する「固有受容覚」というものがあります。
自閉症では、この受容覚が「過剰に反応してしまったり、反応が不足しているのです。
触覚刺激は「自分の身の回りの情報である視覚・聴覚」よりも、自分の体の情報に近い情報です。
身の回りの情報を体の情報として感知するものであるともいえるのです。👇
(イラスト版 発達障害児の楽しくできる感覚統合 10Pの図より 筆者が作成)
感覚統合によって感覚のつながりをスムーズにすると、触覚の過敏性がや姿勢の改善、ボディイメージなどの発達が促される可能性があるのです。
オススメの本は下です。
触覚過敏のある世界を知ることは大切です
もし、感覚の過敏性が「その人にとってどのようなものであるか」は私たちは想像できないものであるために、ついつい「服が痛いだなんて」「それくらい我慢しなさい」と言ってしまいがちです。
本人しかわからないであろう過敏性の世界を、過小評価してしまいがちなのです。
そのためには、感覚過敏のある方が語ってくれていることによく耳を傾けるといいと思います。
体験していないことは、人間は想像できないからです。
服を脱いだり濡れたものが触れない~【触覚過敏】は触覚防衛が過剰な状態~まとめ
自閉症スペクトラム圏の多くの人は、感覚の過敏性がみられます。
- 私たちが想像する以上に触覚が過敏
- 時には痛みすら伴うものである
- 安心して着られるいつもの感覚の服を数枚用意しておく
- 強いマッサージや圧力は感覚の過敏性が軽減されるかもしれない
- 感覚統合訓練は触覚過敏の触覚防衛反応の軽減効果が認められている