自閉症の子育てで、大変なことの1つ子どもとの意思疎通がうまくいかないということがあります。
要するにコミュニケーションの部分でうまく伝わらない、発信できないという問題です。
コミュニケーションには2通りあります。
- 伝えるコミュニケーション(発信・表出)
- 理解するコミュニケーション(受信・受容)
理解する力(受け止める・受信する力)と相手に伝える(発信する)力ですね。
今回はこの2つのうち前者の「相手に伝える」コミュニケーションをまとめていきます。
この記事でわかること
- コミュニケーションの質的障害(発信)(伝える)についてわかるようになる
- その支援方法(育児の方法)についてわかる
【発達障害の育児】表出コミュニケーションと育児の方法
自閉症の子どもは独り言が多い?
通常、子供は「パパ・ママ」「ねんね」などの日常生活で必須のことから覚え始めます。
そして、人にすぐに使ってみますね。
ですが、発達障害の子供では日常生活に必要な言葉はなかなか出ないことも多いです。
その代わり、興味のある言葉は変わった形で表出されることがあります。
- コマーシャルや覚えたセリフの独り言
- 実況中継のような独り言
- 一人芝居のようなセリフのような独り言
これは、自閉症らしい特徴の一つですね。
筆者も独り言を栗菓子しているのをきくと「ああ、自閉症っぽいなあ」と感覚的に感じます。
というお母さんもいらっしゃるかもしれません。
ですが、子供の中では「切り替えや不安を落ち着かせるため」に一役買っていることもあるのです。
詳細は別の記事をごらんください。
【参考】自閉症は実況・独り言が好き?~本人にとっては気持ちを落ち着ける作用があるかも
リンク記事にもありますように、自閉症の子どもにとって独り言は気分を安心させる効果もあることがあります。
ですから、不安なときに独り言が出ているという状況も考えられるのですね。
どんな状況で独り言が増えているのか?少し気にかけて観察してみるといいかもしれません。
どんな時に「独り言が増えるのか」を観察する
自閉症のエコラリア(オウム返し)って何?を解説します
(カセットテープのように繰り返される言葉。。。)
自閉症のコミュニケーション・言葉といえば代表格に「オウム返し(反響言語)」というものがあげられます。
自閉症だけに見られると思われがちなのですが、実は子供は誰でも、定型発達でも、言葉を覚える過程でオウム返しが出ます。
ですが、ごくごく短期間だったり言葉を獲得する過程で自然に消えていくのです。
しかし、自閉症ではこのオウム返しが残ったままになってしまうのですね。
エコラリア(反響言語)には2種類あります。
- 即時のエコラリア (わからないという意味を持つことが多い)
- 遅延の(遅れて発する)エコラリア (様々な意味をもつ)
どちらのエコラリアも機会的な反復言語であって意味をもたないことが多いです。
つまり、意味のある言葉として獲得して「必要に応じて伝えるために使用しているわけ」ではなく、意味はない繰り返しの言葉ということです。
例えば、お母さんの質問をそのまま返したりなどですね。
図のようにエコラリアの頻度が多くなっているときというのは、自閉症の子どもにとって「不安」が隠れていることもあります。
自閉症のコミュニケーション【パターン的な言い回し】について
自閉症では、誰かの言い回しをパターン的にまねたりすることがあります。
- 話すときは、クレヨンしんちゃんの「〇〇だぞ」という言い回しを使う
- ファイナル・アンサー?とテレビで覚えた言い回しを使う
- 答えを知っているのに質問を繰り返す
自閉症のコミュニケーション【ペダントリー】って何?
これは、主にアスペルガー症候群で見られます。
・言葉使いが妙に大人びていたりする
・格式ばった言い回しや堅苦しい言い回し
このような話し方のことです。
自閉症のコミュニケーションの特徴【うまく伝えられずに行動で示す】
(言葉で表現できずにふさぎこんだり・・・あるいはパニックになったり・・・)
自閉症の子どもはコミュニケーションが苦手です。
- 嫌なことを嫌と表現できずにパニック・あるいは布団にもぐってしまう
- 嫌なことでもニコニコしてしまう・引き受けてしまう
- わからないことがあるのに質問できない
- 困っているのにどうやって伝えたらいいのかわからずウロウロ
上記の行動も、「表出コミュニケーション」(伝える)が苦手で、言語化できないために起こります。
ドラえもんの映画を見に行きたいのに「行きたい」とうまく伝えることができなかったりします。
と言ったりするのです。
これは、「ドラえもんの映画が〇月×日にあるので、見に行きたい」という意味なのです。
予定のように繰り返している言葉は、意思表示、「したいです」という意味のコミュニケーションだったりします。
他の例としては、ちょっとわかりにくいのですが願望をそのまま口に出したりします。
息子もこのように言うことがあるのですが、これは本人としては「学校いやだな~。休みにならないかなあ。」という意味なのです。
わからないと
となったり・・・
とならなくてOKです。
希望や願望、感じていることをうまく言語化できないだけなのです。
そのへんをくみ取ってあげるといいと思います。
自閉症のコミュニケーションは一方的に話してしまう(しゃべりすぎる)
自閉症のコミュニケーションで独り言の次に多いのが、一方的なコミュニケーションのとりかたです。
- 相手の話にあわせられない
- 自分の話したい話題だけを一方的に話す
- 相手の答え方を指定してくる
(思い通りの答えを強要してくる)
この思い通りの言葉を返さないと怒るというのは、自閉症によく見られます。
【支援】自閉症のコミュニケーションはどうやって伸ばせばいい?【対処法】
集団に放り込んでもコミュニケーションや相互性は身につきません
コミュニケーションというのは、「相手」があることなので、人とたくさん話してているからといってうまくなるわけでもありません。
特に言葉の遅れのない高機能自閉症は、たくさんの難しい言葉をペラペラととめどなく話すこともあります。
自分のしゃべりたい話題はたくさん話せるからといって、自閉症ではないということではありません。
話好きの自閉症の子は、確かに会話も流暢なのですが、そのように見えないこともあります。
しかし、よく観察してみると自閉症では、相手の会話は自分が話す言葉の小道具としての認識くらいで手の込んだ独り言になりがちです。
コミュニケーションを「勝手に友達とたくさん話す機会があれば伸びるから」と思うのは危険です。
一つ一つ教えていくのが大事です。
コミック会話でコミュニケーションの練習をしよう!
専門家がオススメしているのがこの方法です。
視覚的に会話を見える化すること、コミック会話を使うことです。
「そんな面倒くさいこと」と思うかもしれません。
しかし、内山登紀夫先生はこう述べます。
「しゃべれるし聞こえているのに書くなんて、わざわざ手間のかかることをしなくてもいいのでは」などという先入観は捨てる必要があります。
(高機能自閉症入門、p117、内山登紀夫)
口で何度言っても通じないときに紙に書いて説明したり、質問したら、絵で気持ちや状況書いてくれることもあるそうです。
(高機能自閉症アスペルガー症候群入門、内山登紀夫、水野薫、吉田友子編、P119より引用、中央法規)
私は、おめめどうさんの吹き出しのメモを使っています。
いつも使っているのではなく、理解が難しいときなどに使います。
今は紙にぺたっと張る吹き出しメモが売っていますのでそちらでもOKです。
そもそも、吹き出しなんて秒で書いてもすぐに書けますので、買わなくても手書きでOKです。
自閉症のコミュニケーション対処法【パターン的(マニュアル的)に教える】
コミック会話以外で自閉症のコミュニケーションを練習する方法2つ目は、「パターン」として教えるです。
コミュニケーションの基本はあいさつから始まります。
そして、あいさつは決まったパターンの代表例です。
社会人1年目に、電話応対が怖かった人も多いと思います。
しかし、いつの間にかできるようになっています。
「お世話になっております。」
「少々お待ちくださいませ」
「私には分かり兼ねますので、上長に変わります」
「お手数をおかけします」
「恐れ入ります
などなど。
決まったパターンの言葉である「定例句」を覚えて使っていくことで、ビジネス会話が成り立っていったと思います。
そんな感じのイメージで、自閉症の子どもにも「状況別に便利ないい回し」を決めて教えておくのです。
そして練習しましょう。
言葉が出にくい場合は、代わりのカードを作成して持ち歩いてください。
よかったら「(PECSの代わりになる)コミュニケーションカード(携帯版)の素材ダウンロードできます」の記事もごらんください。
「ありがとう」と「わかりません」「どうしたらいいですか」「手伝ってください」は作っておくといいと思います。
自閉症の子どもがカードを使ってくれないときの対処法
家などで時間があるときに「コミュニケーションのパターンをいくつか作って答えを用意しておいて練習する」という方法もあります。
しかし、筆者の子どもはカードを作っても子供が活用してくれなかったということがあります。
カードを実際にどうやって使うのか調べたのですが、本に載っていませんでした。
そこで、療育の先生にメールで質問したところ、忙しい中だとは思いますが突然の質問にもかかわらず快く応じていただけました。
自閉症の専門家であるK先生によると
自分からカードを使えるようになるためには、そのカードが使える状況であることがいいのだと思います。
- お菓子を届かないところに置く、しまう
- 電池が切れていておもちゃが動かない
- タブレット隠しておく
- 子どもの目の前で子供の興味のあることをする、好きなものを食べる
②家で場面を設定する
③子どもが要求できるような状況でカードを使ってもらう(家などで練習)
④実際の場面で使えるようになる
⑤そのうち言葉で言えるようになる
・使う前には、カードが効果を発揮する状況をわざと作って試す
・子供の自発を促すには、待つことも重要
親が見本を見せて真似してもらう
そのほか、やることとして日頃から親が子供の前で「お手本」をみせておくという方法もあります。
真似できるようであれば、子どもに真似してもらいます。
【自閉症のコミュニケーション】使っていい言葉と使ってはいけない言葉・場所・人などのルールを決める
どんな時にどんな言葉を使っていいのか・いけないのか?の状況や人の立場による判断をすることは自閉症にとっては難しいことです。
ですから、先に一覧表などでわかるようにしておくといいと思います。
例えば、家ではいいけれど外ではしてはいけない言葉を決めておくなどです。
- 通りすがりの人に質問する
- 知らない人に話しかける
- 友達を注意しない
- 目上の人には敬語を使う
【自閉症】コミュニケーションの手段を誤学習しているとき
自閉症がパニックやかんしゃくで相手に伝えようとするとき
自閉症では、「表出コミュニケーション(伝える)」の方法がパニックやかんしゃくになってしまうことがあります。
これは、子供が生きている中でどこかで「パニックやかんしゃく」というコミュニケーションの方法が、子供にとって有効だと学習した結果、起きます。
具体的には
- パニックを起こしたら「嫌なことをしなくて済んだ」
- かんしゃくを起こしたら「お菓子を買ってもらえた」
このようにかんしゃくやパニックを起こした結果、「子供にとっていいことが起きる」とその方法(パニックやかんしゃく)は使える方法だと脳が学習してしまうのです。
これらを誤学習とよびます。
-
【ABA初心者むけ】自閉症の行動について【体験談】
自閉症の子育てで気になることといえば「行動面」ですよね。 例えば 教室で座っていられない(ウロウロする)、教室から逃げる 走り回る 自傷・他害行為(頭をたたくなど) 大声で泣き叫ぶ 強迫 ...
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他には
・わからないときに机につっぷす
なども伝える手段を誤学習した結果です。
パニックやかんしゃくをコミュニケーションの手段(主に要求や回避)をして覚えてしまった場合、親はけっこう大変です。
要求(それをしたいからかんしゃく・パニックを起こす場合)も、回避(それをしたくないからパニックを起こす場合)も、基本的にはパニックには屈せずに反応しないようにしないということを親が見せて経験させる必要があるからです。
この場合の支援では、ABA(応用行動分析学)という手法を使って行動を修正していきます。
行動の変容には2~3か月かかる場合もありますので、親の忍耐力も必要ですし、セラピストや専門家の助言なしで一人でやるのはかなり大変ですので、プロにアドバイスをもらいながら進めるのをおすすめします。
まとめ
今回は表出コミュニケーションとその改善方法をまとめました。
言語は見えないので、自分の気持ちを相手に伝えることが自閉症の子は苦手なようです。
親はちょっと手間ですが、紙とペンさえあれば子供が何を考えているのか?のヒントがわかるのです。
ぜひ、やってみてください。
参考になったら嬉しいです。